ハキダメ記

読書録(主にキリスト教関連)

「ナザレのイエス」ベネディクト16世ヨゼフ・ラツィンガー著 はこんな本だった(2/2)

【ざっくりとしたまとめ】「第4章 山上の説教」は極めて興味深い章であった。本章にはユダヤ教のラビ《ヤーコブ・ノイスナー》氏が出てくる。彼の発想が非常に興味深かった。ユダヤの人々によって「モーセのトーラー」は神から与えられた「法」であった。そ…

「ナザレのイエス」ベネディクト16世著 はこんな本だった(1/2)

【ざっくりとしたまとめ】「ナザレのイエス」シリーズは、前教皇ベネディクト16世が書き著した「全3巻」からなる書である。 本記事では「メシア」と「回心」についてまとめてみた。 「メシア」:私たちが求めるメシアとイエスが示したメシアは異なっている。…

「甘え・病い・信仰」土居健郎著 はこんな本だった

【ザックリとしたマトメ】「甘え」は他者を必要とする。その他者との間に「信頼関係」がある時、人は安んじて「甘え」ることができる。それは同時に「愛」を知ることである。人は「甘え」を通して他者から愛を学ぶ。これは人と神との間にも言える。人は神に…

「ヴィクトリア女王」君塚直隆著 を買った

【ザックリとしたまとめ】ヴィクトリア女王の生涯を通して、19世紀、絶頂期のイギリスの姿を描き出した作品。ヴィクトリア女王―大英帝国の“戦う女王” (中公新書)作者:君塚 直隆発売日: 2007/10/01メディア: 新書「ヴィクトリア女王」君塚直隆著 中公新書 200…

「それでもやっぱり日本人になりたい」W・A・グロータース著 はこんな本だった

【ザックリとしたまとめ】本書には、カトリック司祭のテイヤール・ド・シャルダンが登場する。著者のグロータース氏はカトリックの神父で同時に「方言」を研究する言語学者である。彼は、日本軍が占領する中国に赴任するが、そこでイエズス会士で古生物学者…

「マックス・ウェーバー 近代と格闘した思想家」野口雅弘著 を買った

【ザックリとしたマトメ♪】オモシロエピソード満載でありながらも、ウェーバーの思想が簡潔にまとめられている本。マックス・ウェーバー初心者に最初の一冊として強力プッシュしたい新書。マックス・ウェーバー-近代と格闘した思想家 (中公新書)作者:野口 雅…

「マックス・ウェーバーを読む」仲正昌樹著 を買った

【ザックリとしたマトメ】 ドイツの社会学者および経済学者であるマックス・ウェーバーの主要著作(『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』『職業としての政治』『官僚制』『社会科学と社会政策にかかわる認識の「客観性」』『社会学の基礎概念』『…

「韓国 現地からの報告」伊東順子著 を買った

【ザックリとしたまとめ】 韓国および韓国人の「素の姿」が見えてくるような新書。本書によれば、著者が現地で見た韓国と、日本のメディア(特にテレビ)で伝えられる韓国の間には「ズレ」があるという。韓国 現地からの報告 (ちくま新書)作者:伊東 順子発売…

「今こそアーレントを読み直す」仲正昌樹著 を買った

ハンナ・アーレントは「ひねくれ」た政治哲学者だという。たとえば、彼女は左派知識人受けの悪い「アメリカ」を高く評価しているのである。一方で彼女は左派知識人受けの良い「フランス革命」や「ロシア革命」を批判的に見ているのである。今こそアーレント…

「回勅 真理に根ざした愛」ベネディクト十六世著 はこんな本だった

【ザックリとしたまとめ】 すべての人に及ぶ「全人的発展」こそが、教会のめざす「真の発展」であり、この「真の発展」を果たすためには「真理に根ざした愛」という「神」に向かう姿勢が必要となる。真理に根ざした愛作者:教皇ベネディクト十六世発売日: 201…

「ポプロールム・プログレシオ −諸民族の進歩推進について−」パウロ六世著 はこんな本だった

【ザックリとしたまとめ】 真の「進歩」とは、「全人的な発展」のことである。 そして、真の「進歩」は、「物質的な発展」だけでは不十分であり、「人間的な発展」をも伴っていなければならない。 そして、この真の「進歩」を果たすには、過度な「自由競争」…

「エリザベス女王」君塚直隆著 を買った

次から次へとページをめくりたくなる「飲みやすさ」と高い専門性という「コク」とをあわせもった、イギリス式のおいしい「紅茶」のような新書であった。エリザベス女王-史上最長・最強のイギリス君主 (中公新書)作者:君塚 直隆発売日: 2020/02/18メディア: …

「信仰と未来」ヨゼフ・ラツィンガー著 はこんな本だった

キリスト教の「神学的思考」と現代科学の「実証的知識」は、噛み合わず分裂してしまっているが、それはそれぞれの思考の対象が異なっているからである。なので「実証的思考」がいかに素晴らしいものであっても「神学的思考」の代替とはならない。 また、「神…

「育てられない母親たち」石井光太著 を買った

署名には「母親たち」とあるが、母親たちだけでなく父親たちもまた育てられないのである。そして、ネグレクトや虐待をする「育てられない親たち」もまた、その幼少期にネグレクトや虐待を受けて育っており、彼らは心に多くの傷を負っているのである。「衝撃…

「おそれとおののき」キルケゴール著 はこんな本だった

キルケゴールの「おそれとおののき」を図説付きで解説。 アブラハムは、神から祝福を受け、子孫の繁栄と豊穣な土地を約束される。けれども神はアブラハムに息子イサクをささげることを要求する。「信仰の騎士」アブラハムは、その要求に従って息子イサクを殺…

『韓国を支配する「空気」の研究』牧野愛博(よしひろ)著 を買った

韓国を支配する「空気」とは、「公の場で日本をほめたたえてはならない」というものであり、そしてそれは戦争経験者への「気遣いと遠慮」から生じた「空気」だという。 また、韓国人の気質は白黒はっきりつける「本音を好む」ものであり、それは「本音と建て…

「反復」キルケゴール著 はこんな本だった

ものの捉え方には「追憶」と「反復」の二種がある。 「追憶」は、人の世を「観察者」として生きることである。 「反復」は、人が「当事者」として生まれ変わり、人の世を生きることである。 そして「反復」は、『ヨブ記』のヨブが見舞われたように、苦しみと…

「日本の貧困女子」中村淳彦著 を買った

本書は、「貧困女性」、特に北関東と沖縄に住む「貧困女性」に焦点を当てた本である。 そして、本書を読み進めていくと、彼女たちに不足しているのは「金銭」だけでなく「愛情」であることが分かってくるのである。日本の貧困女子 (SB新書)作者:中村淳彦出版…

「ダライ・ラマ 宗教を越えて」ダライ・ラマ14世著 はこんな本だった

本書において、ダライ・ラマは「世俗的な倫理(宗教に立脚しない倫理)」を提唱している。 この新しい倫理は、「価値観」のような外から押しつけるような性質のものではない。 ダライ・ラマが提唱する「世俗的な倫理」とは、人間が生来的にもっている「内な…

「悪について」エーリッヒ・フロム著 はこんな本だった

本書において、著者のエーリッヒ・フロムは、悪の真髄を「衰退のシンドローム」と銘打ち、それはネクロフィリア(死への愛)、悪性のナルシシズム、近親相姦的共生の三要素から構成されていると述べている。 そしてこの「衰退のシンドローム」と対抗するもの…

「イスラム2.0」飯山陽著 を買った

本書は、「イスラム2.0」というSNS時代のイスラム教を分析した本である。 特に第七章の「イスラム教徒と共生するために」と題された章は、日本人がイスラム教徒と付き合う点で気をつけるべきことが「具体的」に記されているので、誰しも皆一読しておくべきだ…

「回勅 信仰の光」教皇フランシスコ著 はこんな本だった

現代社会では、「信仰」なるものは、弱者のすがるもの、科学的探求の邪魔ものとみなされている。 けれども、「自己中心」的な状態から解放されるためにも、またその他のためにも、「信仰」ってものは大切なのだよ、というのが本回勅の主張である。 個人的に…

「回勅 希望による救い」ベネディクト十六世著 はこんな本だった

今回取り上げた回勅のテーマは「希望」です。 キリストが十字架上の死によって人間にもたらした「希望」。それは、人々が望んでいたような「外的な社会構造の変化」によるあがないではなく、「人間の内側からの変化」によるあがないであったのだという。 ま…

「回勅 神は愛」教皇ベネディクト十六世著 はこんな本だった

「回勅」とは、ローマ教皇が書いて、カトリックの信者たちが読む書簡のことである。 本回勅では、人をキリスト信者にするのは「神の愛」との《出会い》であることが述べられており、また、人が人を、そしてなにより神を愛するようになるには、まず愛されると…

「不安のしずめ方」加藤諦三著 はこんな本だった

本書は、「不安」に立ち向かう方法を解説した本である。 人は「不安」と向き合わないことによって「不安」を解消しようとするのだという。 しかし、「不安」をしずめるためには「不安」に立ち向かわなければならないのだというのである。 不安のしずめ方―人…

「宗教なんかこわくない!」橋本治著 はこんな本だった

本書は「宗教」というものを分析した書であるばかりでなく「日本人論」にもなっている。 橋本治氏は言う。「宗教とは現代に生き残っている過去」にすぎない、と。 また言う。この過去の遺物から逃れるには「自分の頭で考える」という習慣を身につけなければ…

「アウグスティヌス講話」山田晶著 を買った【その2】

本書は、アウグスティヌスの思想についての講話をまとめた本である。 今回取り上げた「創造と悪」という講話において、講師の山田氏はアウグスティヌスと道元の思想の類似性について熱弁している。 ふたりの共通点は「当事者性」にあるというのだが、それは…

「アウグスティヌス講話」山田晶著 を買った 【その1】

アウグスティヌスの『告白』は「ある女性」に捧げられた本だという。 その女性とは、アウグスティヌスと同棲生活をしていた人であったらしい。 ふたりは別れてしまうのであるが、アウグスティヌスは彼女に対する懺悔の気持ちもあって、『告白』を著したのだ…

「魔女狩り」森島恒雄著 を買った

「魔女狩り」という異常事態において、聖職者のような「エリート」が主導的であったのか、そうではなく「民衆」が主導的であったのかという問題。 本書は「エリート主導」論を採用しており、その様々なエピソードを語っている。 一方、ウィキペディアでは「…

「四つの愛」C・S・ルイス著 はこんな本だった

C・S・ルイスの言う「四つの愛」とは、「愛情」、「友情」、「恋愛」、「聖愛」のことである。 さらにルイスは、「愛の要素」として、「与える愛」、「求める愛」、「鑑賞的愛」の三つを挙げている。 そして、「人間の愛」は、大切なものであるに違いない…