ハキダメ記

読書録(主にキリスト教関連)

「ダライ・ラマと転生」「モンスターマザー」

ダライ・ラマと転生」(石濱裕美子著/扶桑社新書

ダライ・ラマと転生 (扶桑社新書)

ダライ・ラマと転生 (扶桑社新書)

 著者の石濱裕美子氏のブログ(白雪姫と七人の小坊主達)は以前から読んでいて、チベット仏教のアレコレや石濱氏の織りなす日常のドタバタを楽しませてもらっていた。その氏が書き下ろされた近著で、値段も手頃であったので購入した。
 私はカトリックであるが、仏教(特にチベット仏教)やダライ・ラマ14世には興味があって、ときおり関係する書物を買っては読んできた。仏教用語は難しくて、なかなか私の頭に入ってきてくれはしないが、それでも人の心の内面に関する教えの奥深さに感銘を受けたりしてきた。そして私にとって、他宗教の教えを(片手間であっても)学ぶことは、原理主義に陥らないようにするための大切な予防薬でもあるのだ。
 私が思うに、仏教は「内からの苦しみ(煩悩)」に関する教えが丁寧かつ豊富で、キリスト教は「外からの苦しみ」に関する教説が多いように思われる。教皇書簡「サルヴィフィチ・ドローリス 苦しみのキリスト教的意味」におけるように、キリストの死によって、苦しみは<悪>から<あがない>に変わった。よって苦しみはあがないであって、愛を成長させるものであるから決して絶望してくれるな。といったように、言及されている苦しみは「外からの苦しみ」のみのように思われる。「外からの苦しみ」に関してはそれでいいのかもしれないが、思い煩いや自己疎外感のような「内からの苦しみ」の解決法には口数が少ないような気がする。


「モンスターマザー」(福田ますみ著/新潮社)

 ニューズウィーク日本語版のwebページをノホホンと見ていたら、この本が紹介されていた(「お母さんがねたので死にます」と自殺した子の母と闘った教師たち | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト)。見出しに「バレー部でのいじめが原因だったのか、異常な母親に追いつめられたのが原因だったのか――。2005年に起きた「丸子実業高校バレーボール部員自殺事件」の真相を描き切ったノンフィクション『モンスターマザー』は絶望的な読後感」と書いてあり、興味を持った。
 私はテレフォン人生相談を聞くのが好きで、加藤諦三さんの本もけっこう読んでいるのだが、最近読んだ「非社会性の心理学」(加藤諦三著/角川oneテーマ21)に出てくる人物像にこの母親が似ているんじゃないかと思って、その人となりが具体的に知りたくなり購入した。
 加藤氏によれば、最近増えてきているのは、反社会的な人物ではなく、<非社会的な>人物なのだそうである。
 非社会的人物とは、社会からはみ出し社会に反抗するような人物ではなく、社会からはみ出すことはないが社会に無関心な人物のことをいう。彼らは自分しかなく他者はいない。その自分も実物大の自分ではなく、皆に一目置かれる自分である。実物大の自分は受け入れられない。故に彼らは自分しかないが、自己不在なのである。
 私にも程度の差はあれ、こういった心理の一面はあって、だからこそ興味を持ったのだ。どうしても、駄目な自分が受け入れられなくて、自分を責めてばかりいる時もあるから。


サルヴィフィチ・ドローリス

サルヴィフィチ・ドローリス