「最下層女子校生 無関心社会の罪」橘ジュン著
「最下層女子校生 無関心社会の罪」(橘ジュン著/小学館新書)
- 作者: 橘ジュン
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2016/08/01
- メディア: 単行本
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そのトピックの中で、ちょっと前にNHKで放送され、その後ネットで炎上した「貧困女子高生」の話題が取り上げられており、
メディアの貧困ビジネス:ぜいりしブログ
http://furitani.blog.so-net.ne.jp/2016-10-14
ある記事が紹介されていた。
NHK「貧困女子高生」報道炎上は何が間違っていたのか:ダイヤモンド・オンライン
http://diamond.jp/articles/-/104452
その記事が大変良いものであったので、その記事の鼎談の論客の一人である橘ジュン氏の本を買ってみた次第である。
もともと私は「貧困問題」には興味を持たないようにしていた。私自身が「ワーキングプア」であるというのも理由のひとつだし、こういった問題が取り上げられるとネット上で起こる「炎上」の騒ぎからも遠ざかっていたかったからでもある。
しかし、この鼎談を読んでいると、「貧困問題」は今まで自分が頭の中で描いていたものとは性質が異なっていることがわかるのである。程度ではなく性質が、である。
論客たちの言っている「貧困問題」とは、メディアが騒ぎがちな「金銭の貧困」と言った単純かつ政治的な面だけなのではなく、虐待やネグレクトなど「愛情の貧困」と言った繊細で社会的な面も含んでいることが分かるのである。「愛情の貧困」といった視点が、今までの私に欠けていたのである。
「愛情の貧困」は親の収入の多い少ないに関わらずに起こるものである。しかし、お金がないと「逃げ場がない」というのも確かだと思う。
お金のある人は夜の盛り場などへ逃げ出して、愛の乏しさを誤魔化すことができるかもしれない。
けれどもお金のない少年少女たちは、その逃げ出す場所すらなく、誤魔化しも与えられず、一日中、愛情を欠いた家庭に閉じこめられ、孤立を深めていくことしかできないと思うと愕然とした気持ちになる。
これが本当の「貧困問題」だとすると金銭以上に切実な問題だと思う。
今回買ったこの本には、ケース1からケース15まで15人の女性のケースが取り上げられている。目次の見出しを眺めているだけでもキリキリと胃が痛くなってくる。
第1章 精神的虐待の呪縛
ケース1 志緒理
小学校にいかせてもらえず、自分の名前が書けない/「それでもお母さんに認めてもらいたい」第2章 父親からの性的虐待
ケース6 沙羅
12歳から始まったリストカット/父親の子どもを2度堕胎第3章 酷すぎる貧困の辛酸
ケース8 有紀
3人きょうだいの父親はすべて別人/教育支援金を母親が使い込み高校を退学第4章 一生消えないイジメの傷跡
ケース12 光
イジメを相談しても母親は無関心/イジメの首謀者の罠で4人の男に集団レイプされる(最下層女子高生 目次より一部抜粋)
まだ読み始めたばかりだが、登場人物たちは一般社会とは全く別の世界で育てられていることがわかる。本当にネグレクトの子どもたちなのだ。なにも教えられていないので、常識が通用しない面もでてくる。だから、この鼎談で言われているとおり、取材する側もちゃんと取材対象である彼らに寄り添わないといけないということが痛感させられるのだ。
正直な話、テレビでこういった「貧困問題」が取り上げられ、取材された人が私より少しでもいいものを持っていたりすると、私の中の「妬み」が蠢くのを私は感じる。
そんな未熟な私にできることと言えば、この「妬み」から眼を背けることなく、「妬み」が暴れ出さないように注視していくことだけである。
たとえば、ブラウン神父のように。
人間は自分がどれほどの悪人なのか、どれほどの悪人になりそこなっているものなのか、それがわかっていないうちはいくら善人ぶっても何にもならん。(中略)ふらちな犯罪人なるものを自らのうちに見つけだして引っ捕らえ、こいつが暴れたり狂いだしたりしないよう、同じ帽子を一緒にかぶって鼻つきあわせて暮らしても大丈夫なよう、こいつを自家薬籠中のものとしてしまうことを念頭とするようになるまでは、人間というものはどこまで行ってもだめなものです。
(ブラウン神父の秘密 p20)
妬みなどの「負の感情」は「正義」という武器を手にして相手を傷つけようとするものである。相手ばかりではない、時には自分をも傷つけてしまうものなのである。「正しさ」に眼を奪われて、心の中の憤怒や嫉妬に気がつかないものなのだ。
けれど、「正義」を手にしていいのは「愛」だけなのである。
- 作者: G.K.チェスタトン,中村保男
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1982/02/01
- メディア: 文庫
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