「ヴィクトリア女王」君塚直隆著 を買った
【ザックリとしたまとめ】ヴィクトリア女王の生涯を通して、19世紀、絶頂期のイギリスの姿を描き出した作品。
- 作者:君塚 直隆
- 発売日: 2007/10/01
- メディア: 新書
以前(今年の四月)、本ブログで取り上げた『エリザベス女王』(中公新書)がとてもおもしろかったので、今回はおんなじ著者である君塚直隆氏の新書をチョイスしてみた。
前回はエリザベス2世女王(在位:1952-)であったが、今回はヴィクトリア女王(在位:1837-1901)である。
そして、本書は、ヴィクトリア女王の生涯を描くことによって、ヴィクトリア朝時代というイギリスの絶頂期の実像に迫った作品である。
ちなみに、本書の副題は「大英帝国の“戦う女王”」である。
そして、この副題の通り、ほんとにヴィクトリア女王は当時の政権と戦い、自分の意見を通そうとするのである。
中にはディズレーリ(ビーコンズフィールド伯爵)のように馬の合う首相もいたのだが、まったくそりの合わないグラッドストンのような首相もいた。
やたら圧の強いヴィクトリア女王にも負けない、この反骨の政治家グラッドストンとの間の確執が本書の読みどころであろう。
また、ヨーロッパは彼女の死後まもなく、第一次世界大戦へと至るわけだが、その当事国の君主たちがみなヴィクトリア女王の親族なのである。
女王の長女ヴィッキーの子どもがドイツ帝国のヴィルヘルム2世だし、女王の孫であるジョージ5世の従兄弟がロシア帝国のニコライ2世なのである。
本書では、ヴィクトリア女王と彼らの関係も描かれている。
たとえばヴィルヘルム2世が即位したときのエピソードがある。
二十九歳の新皇帝は、早速に「対等の」君主として、祖母ヴィクトリア女王にも挨拶状を送ってきた。とはいえ、もちろん出だしは「愛するおばあちゃま」のままである。
「第VI章 大英帝国の女王として」(p.233-234)
この初孫のヴィルヘルム2世は即位当初からイキっており、本書では彼のオラオラな態度を見て次第に冷えていく女王の心模様も描かれている。
そして、こうしたヴィクトリア女王の親戚たちが、第一次大戦において敵対しあい、壮絶な戦いを繰り広げることになるのである。
そうした意味で、本書は「第一次大戦のプロローグ」としても読めるであろう。
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