「日本の貧困女子」中村淳彦著 を買った
本書は、「貧困女性」、特に北関東と沖縄に住む「貧困女性」に焦点を当てた本である。
そして、本書を読み進めていくと、彼女たちに不足しているのは「金銭」だけでなく「愛情」であることが分かってくるのである。
「日本の貧困女子」中村淳彦著 SB新書 2019年11月15日初版『ハタチになったら死のうと思ってた』と『名前のない女たち』
『ハタチになったら死のうと思ってた』(ミリオン出版)という、以前に拙ブログで取り上げた本も同じ著者による本である。
著者の中村淳彦氏は、その昔『オレンジ通信』なるエロ本に連載を持っており、その連載をまとめた本、『名前のない女たち』(宝島社文庫)の内容が、あまりにセキララかつあまりに衝撃的で、あまりに印象に残ったので、それ以降、中村氏の著作はなるべく手に取るようにしているのである。
『名前のない女たち』は、「企画系AV女優」という職業に従事している女性たちへのインタビュー本であった。
そして、彼女たちの語る事を読んでいると、彼女たちの多くが、虐待やネグレクト、学校内でのイジメなど、壮絶な環境の中で育ってきたことが分かるのである。
彼女たちは、その人生の中で「愛情」を経験することができなかったために、どうしようもなく強烈に「愛情」を求めて、モガきにモガいて、彷徨うに彷徨って、体はもちろんのこと、心までもがボロボロの傷だらけになっていたのである。
ちなみに、『ハタチになったら死のうと思ってた』の方は、単体AV女優(芸名のある女優)へのインタビュー本である。
彼女たちの生い立ちも、読んでいて胸が苦しくなってくるものがあった。
都市圏と地方における「貧困」の違い
本書は、タイトルからも分かるように、日本における「貧困問題」を扱った本である。
本書は、主に北関東と沖縄に住む貧困女性に焦点を当てており、その過程で「都市圏」と「地方」における貧困の比較も行っている。
本書によれば、「都市圏」の貧困女子は一人暮らしで未婚であるのに対し、「地方」の貧困女子は実家暮らしで既婚であることが多いのだという。
「都市圏」の貧困女子は、非正規雇用であり、高い家賃によって生活が困窮し、人間関係も孤立しがちなのだという。
「地方(北関東)」の貧困女子は、結婚して家を持っても、夫のギャンブル癖や車のローンなどによって貧困から抜け出せず、かつ夫のドメスティックバイオレンスに苦しめられるケースが多いそうである。
金銭だけではない「貧困」
本書における中村氏のルポを読んでいると、ひとまとめに「貧困問題」といっても、貧しさに苦しむ人たちに足りていないのは「金銭」だけでなく、なによりも「愛情」であることが思い知らされるのである。
こうした「貧困問題」は、以前取り上げた『最下層女子高生』(橘ジュン著 小学館新書)にも描かれていた(この本の内容もかなり衝撃的だあった)。
そして、『名前のない女たち』や『ハタチになったら死のうと思ってた』ともつながっているところがある。
本書に登場している女性は次のように述べている。
1歳とか2歳とか物心がついたときから、母親に虐待されていたのね。最近はちょっと手をあげただけで虐待みたいなことが言われているけど、私がされていたのはたぶん本当の虐待。母親はヒステリーを超えて、ちょっとおかしな人、1日も欠かすことなく殴られていましたから。ふつうに暮らしているなかで突如母親が怒鳴りだして、気が済むまで殴られる。
暴力を振るう理由は、ご飯を残したとか、玄関の靴が曲がっていたとか、ゴミが落ちていたとか、お父さんが帰ってこないとか、常にどうでもいいことだったようだ。
「第1章 東京とは異なる、北関東の女性の貧困」(p.72)
貧しさに苦しむ人たちの多くは、彼女のように虐待が「当たり前」となっている家庭で育っているケースが多いようである。
そして、このことの深刻な点は、こうした「当たり前」の虐待が、彼らの子どもへと引き継がれるところにある。
「当たり前」に虐待された彼らもまた、自分の子どもを「当たり前」のように虐待してしまい、「負の連鎖」が途切れないのである。
このように、本書を読んでいると、日本は「階層化社会」であり、恵まれている人々は恵まれたまま、貧しい人々は貧しいままであることが分かってくるのである。
「金銭」の面でも、そして「愛情」の面でも、である。
■■■■■【関連する過去記事】■■■■■
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■■■■■【参考図書】■■■■■
- 作者:中村 淳彦
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2004/06
- メディア: 文庫