ハキダメ記

読書録(主にキリスト教関連)

2019-01-01から1年間の記事一覧

「悪について」エーリッヒ・フロム著 はこんな本だった

本書において、著者のエーリッヒ・フロムは、悪の真髄を「衰退のシンドローム」と銘打ち、それはネクロフィリア(死への愛)、悪性のナルシシズム、近親相姦的共生の三要素から構成されていると述べている。 そしてこの「衰退のシンドローム」と対抗するもの…

「イスラム2.0」飯山陽著 を買った

本書は、「イスラム2.0」というSNS時代のイスラム教を分析した本である。 特に第七章の「イスラム教徒と共生するために」と題された章は、日本人がイスラム教徒と付き合う点で気をつけるべきことが「具体的」に記されているので、誰しも皆一読しておくべきだ…

「回勅 信仰の光」教皇フランシスコ著 はこんな本だった

現代社会では、「信仰」なるものは、弱者のすがるもの、科学的探求の邪魔ものとみなされている。 けれども、「自己中心」的な状態から解放されるためにも、またその他のためにも、「信仰」ってものは大切なのだよ、というのが本回勅の主張である。 個人的に…

「回勅 希望による救い」ベネディクト十六世著 はこんな本だった

今回取り上げた回勅のテーマは「希望」です。 キリストが十字架上の死によって人間にもたらした「希望」。それは、人々が望んでいたような「外的な社会構造の変化」によるあがないではなく、「人間の内側からの変化」によるあがないであったのだという。 ま…

「回勅 神は愛」教皇ベネディクト十六世著 はこんな本だった

「回勅」とは、ローマ教皇が書いて、カトリックの信者たちが読む書簡のことである。 本回勅では、人をキリスト信者にするのは「神の愛」との《出会い》であることが述べられており、また、人が人を、そしてなにより神を愛するようになるには、まず愛されると…

「不安のしずめ方」加藤諦三著 はこんな本だった

本書は、「不安」に立ち向かう方法を解説した本である。 人は「不安」と向き合わないことによって「不安」を解消しようとするのだという。 しかし、「不安」をしずめるためには「不安」に立ち向かわなければならないのだというのである。 不安のしずめ方―人…

「宗教なんかこわくない!」橋本治著 はこんな本だった

本書は「宗教」というものを分析した書であるばかりでなく「日本人論」にもなっている。 橋本治氏は言う。「宗教とは現代に生き残っている過去」にすぎない、と。 また言う。この過去の遺物から逃れるには「自分の頭で考える」という習慣を身につけなければ…

「アウグスティヌス講話」山田晶著 を買った【その2】

本書は、アウグスティヌスの思想についての講話をまとめた本である。 今回取り上げた「創造と悪」という講話において、講師の山田氏はアウグスティヌスと道元の思想の類似性について熱弁している。 ふたりの共通点は「当事者性」にあるというのだが、それは…

「アウグスティヌス講話」山田晶著 を買った 【その1】

アウグスティヌスの『告白』は「ある女性」に捧げられた本だという。 その女性とは、アウグスティヌスと同棲生活をしていた人であったらしい。 ふたりは別れてしまうのであるが、アウグスティヌスは彼女に対する懺悔の気持ちもあって、『告白』を著したのだ…

「魔女狩り」森島恒雄著 を買った

「魔女狩り」という異常事態において、聖職者のような「エリート」が主導的であったのか、そうではなく「民衆」が主導的であったのかという問題。 本書は「エリート主導」論を採用しており、その様々なエピソードを語っている。 一方、ウィキペディアでは「…

「四つの愛」C・S・ルイス著 はこんな本だった

C・S・ルイスの言う「四つの愛」とは、「愛情」、「友情」、「恋愛」、「聖愛」のことである。 さらにルイスは、「愛の要素」として、「与える愛」、「求める愛」、「鑑賞的愛」の三つを挙げている。 そして、「人間の愛」は、大切なものであるに違いない…

『信仰と「甘え」 増補版』土居健郎著 を買った

本書は、『「甘え」の構造』でおなじみの土居健郎氏が、「甘え」と「信仰」の関連性について語ったことをまとめた本である。 世間一般に「甘え」には否定的なイメージが強い。 しかしながら本書では、「甘え」は信仰にとって、重要な感情であることが説明さ…

「人間と永遠」G・K・チェスタトン著 はこんな本だった

このG・K・チェスタトンの「人間と永遠」は、H・G・ウェルズの『世界史概観』に対する反論として著された本である。 H・G・ウェルズは、「人間の完成」を未知の未来に見いだしていたが、キリスト教徒であるチェスタトンは、「人間の完成」をキリスト教…

『「カルト」はすぐ隣に −オウムに引き寄せられた若者たち』江川紹子著 を買った

オウムに引き寄せられた若者たちの様々なケースを、著者の江川紹子氏が細かく分析し丁寧にまとめ、「オウム事件の教訓」として「カルト」にねらわれやすい若者に向けて書かれた本です。 「カルト」は、「遠い世界」の存在ではなく、私たちの「すぐ隣に」いる…

「正統とは何か」G.K.チェスタトン著 はこんな本だった 【その2】

「狂人とは理性を失った人ではない。狂人とは理性以外のあらゆる物を失った人である。」チェスタトンの有名な逆説。 「内なる光」、人間の徳とか能力とかいったものを「崇拝の対象」にすることは、大変危険であるということ。 キリスト教は一刀両断する。「…

「正統とは何か」G.K.チェスタトン著 はこんな本だった

「正統」ほど危険に満ち、興奮に満ちたものはないということ。 イエス・キリストには「かくしごと」があったということ。 「物質主義」は、人類を宗教から解放したが、別の宿命論に結びつけたということ。 正統とは何か作者: ギルバート・キース・チェスタト…

「マキァヴェッリ−『君主論』をよむ」鹿子生浩輝著

マキァヴェッリの一般的なイメージは、悪徳を勧める「冷酷非情な人」というものであろう。 しかし、本書は、そういったイメージを覆す。 マキァヴェッリは、ユーモラスで女好きな人物であったという。 そして、『君主論』も、すべての君主に向けて書かれた論…

「愛するということ 新訳版」エーリッヒ・フロム著 オマケ

前回記事のオマケ。 本書において、フロムはさまざまな「愛のかたち」を分析している。 フロムによれば、「自己愛」は「利己主義」と同一視されがちだが、全く逆の性質のものだという。 そして、「利己的な人間」は、他人はもちろん、自分自身すら愛すること…

「愛するということ 新訳版」エーリッヒ・フロム著

「愛は技術である」とフロムは言う。 フロムの言う愛とは、テレビドラマで観るような「情熱的なもの」ではなく、「慈愛」のことを指しているようである。 そして、「愛する技術」の習得には、自己中心主義(ナルシシズム)からの脱却が必要であり、そのため…

「ライシテから読む現代フランス −−政治と宗教のいま」伊達聖伸著

今回のテーマは、フランスの政治制度「ライシテ」である。 ライシテから読む現代フランス――政治と宗教のいま (岩波新書)作者: 伊達聖伸出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2018/03/21メディア: 新書この商品を含むブログ (3件) を見る「ライシテから読む現代…

「ユダヤ教の人間観 旧約聖書を読む」エーリッヒ・フロム著 その3

今回は、フロムの「ユダヤ教の人間観」の読後感のオマケ。 気になった部分を抜き書きしてみるのだ♪♪ 「近親相姦的な束縛」という気になるワードも出てくるゾッッッ。ユダヤ教の人間観―旧約聖書を読む (河出・現代の名著)作者: エーリッヒフロム,Erich Fromm,…

「ユダヤ教の人間観 旧約聖書を読む」エーリッヒ・フロム著 その2

今回のテーマは「偶像崇拝」。「偶像」ってナニ??っていうお話なの♪ この本での「偶像崇拝」に対するフロムの見識は、とっっっても分かりやすくて、ついでに新鮮ピチピチな感じがするの♪♪ ユダヤ教の人間観―旧約聖書を読む (河出・現代の名著)作者: エーリ…

「ユダヤ教の人間観 旧約聖書を読む」エーリッヒ・フロム著 その1

この本は「宗教なんて、なんかウサン臭いし、堅苦しそうだし、なんかイヤだわ、近寄りたくないわっ。......でも、人生に意義をもって生きていきたいわっ、ステキな目標をもって生きていきたいわっっっ!」という人むけの本だろう。ユダヤ教の人間観―旧約聖書…

「【中東大混迷を解く】シーア派とスンニ派」池内恵著

「イスラム教」というものを少しでも理解したくて買った本である。 著者の池内恵氏を知ったのは、渡辺京二氏の本、『さらば、政治よ 旅の仲間へ』(晶文社刊)によってである。 その本では、池内氏の『イスラム国の衝撃』が紹介されていた。たしかに、イスラ…

「トマス・アクィナス 理性と神秘」山本芳久著

「神学」の新書である。トマス神学の「入門書」としての位置づけである。 だが、その内容は相当に「濃ゆい」。 著者の山本氏は《序》で次のように述べている。 偉大な思想家の思索の全貌を薄く広く要約的に紹介するだけの「入門書」は、結局、何に対しても読…

『「甘え」の構造 (増補普及版)』土居健郎著

「鬱は甘え」という言葉をよく耳にする。そして、このように言われるとき、「甘え」というものは、《良くないもの》、《必要ないもの》、そして《否定すべきもの》と捉えられているようである。 しかしながら、本書『「甘え」の構造』は、「甘え」をこのよう…

「リバタリアニズム アメリカを揺るがす自由至上主義」渡辺靖著

「帯」に引かれて買った本である。 帯にある、 ○移民 ○人工妊娠中絶 ○規制緩和 ○LGBTQ×ナショナリズム ×人種差別 ×イラク戦争 ×オバマ・ケア ×銃規制 ×死刑 というような、「保守」とも「リベラル」とも異なる、「リバタリアニズム」独自の価値観がブログ主…

「宣教のヨーロッパ」佐藤彰一著

今回、「ナナメ読み」するのは、佐藤彰一著の『宣教のヨーロッパ』(中公新書)である。 本書には「大航海時代のイエズス会と托鉢修道会」という副題が付けられており、ローマ・カトリック教会が、ヨーロッパにおける「宗教改革」を受けて、《新大陸アメリカ…

「イスラム教の論理」飯山陽著

今回は、飯山陽(あかり)著の『イスラム教の論理』をナナメ読みしていこうと思う。 前回取り上げた岩波新書の『ユダヤ人とユダヤ教』は、ユダヤというものを多様な視点から解説した本であったのに対し、本書は、現代のイスラム教、特に「イスラム国」に代表…

『ユダヤ人とユダヤ教』市川裕著

先日、岩波新書から出ていた『ユダヤ人とユダヤ教』という本を買った。この本は「ユダヤ」というものを「多様な観点」から考察した本である。ちなみに「チンコ」にまつわるエピソードまでも載っかっている。 そして、今回は久しぶりに「こんな本を買った」と…