「よりよき世界を求めて」第八章
「よりよき世界を求めて」(カール・R・ポパー著/小河原誠・蔭山泰之訳 未来社 1995年刊)
Auf der Suche nach einer besseren Welt by Karl R. Popper(1989年刊)
- 作者: カール・R.ポパー,Karl R. Popper,小河原誠,蔭山泰之
- 出版社/メーカー: 未来社
- 発売日: 1995/12/01
- メディア: 単行本
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要約
第八章 文化の衝突について
当該部分は、著作権法に触れる可能性があるため、削除しました。(2017.11.11)
感想
ポパーは、西洋文化を「もっともよいもの」と言っている。しかし、ポパーはこう述べることによって、西洋文化を「正しいもの」と言いたいのではないと思う。
彼は、西洋文化の中に「批判の伝統」を認めているだけで、それを「よいもの」と言っているにすぎないのだ。そして、この「批判の伝統」は、ヨーロッパの地で繰り返された「文化の衝突」のかけがえのない果実なのである。
私たちは、よりよい世界を夢見る。そんな私たちに望まれるのは、相手の価値観にも敬意を払い、かつ自分の価値観であっても批判と改善を怠らないという姿勢である。そうでないと知らぬ間に、自分の価値観を正当化してしまう結果に陥ってしまうのだ。
このあたりをキリスト教徒っぽく表現すると、正しいのは「私たち」ではなく、正しいのは「神のみ」ということだ。
私たち人間は、正しい神に向かって成長していく存在に他ならないということだ。つまり、私たち人間は、いつまでたっても不完全な存在にすぎないが、それでも正しさに向かって改善を繰り返しながら成長していく存在であるということだ。
だから、自分の価値観を正当化し、正しいのは「私たち」であるとしてしまったら、もはや成長する機会を永久に失ってしまうことになるのだ。
私たちは、善と悪のどちらの側に立つかを求められているのではなく、自分の大地に立って、善に向かって伸びていくことを求められているのだと思う。