「エリザベス女王」君塚直隆著 を買った
次から次へとページをめくりたくなる「飲みやすさ」と高い専門性という「コク」とをあわせもった、イギリス式のおいしい「紅茶」のような新書であった。
- 作者:君塚 直隆
- 発売日: 2020/02/18
- メディア: 新書
読みごたえがありながらも、一気に読み進められる本であった。
この新書。
例えるならば、読み始めたら止まらない、次から次へとページをめくりたくなる「飲みやすさ」と、近代イギリス政治外交史を専門とする君塚氏、その筆致が醸し出す「コク」とをあわせもつ「おいしい紅茶」である。
本書は、現在のイギリスの女王陛下であらせられる「エリザベス2世」の評伝である。
本書では彼女が、「リリベット」と呼ばれていた幼少期から、夫フィリップとの結婚、息子チャールズの誕生、若干25歳での女王即位、そして現在に至るまでを描いている。
また、女王と歴代首相との確執も描かれており、そこがスリリングであり、特に「鉄の女」サッチャーとのやりとりのあたりはワクワクしながら読み進めた。
しかし歴代の首相たちが回顧録などで述べているとおり、「この拝謁が単なる形式的なものだとか、社交上の儀礼に限られていると想像する者がいたら、それは完全に間違い」(マーガレット・サッチャー元首相の言葉)なのである。
「まえがき」(p.v)
エリザベス女王は、単なるお飾りの君主ではないのである。
また、本書の巻末には、「エリザベス女王関連年譜」と「主要参考文献」まで載せられている。こういうのはあるとホントにウレシイ。
著者・君塚氏は、中公新書から他にも本を出しているようで、『ヴィクトリア女王』と『物語 イギリスの歴史』があるみたいである。
本書がおもしろかったので、これらも「積ん読」候補に入れておこうと思う。
あと、新潮選書から出ている『立憲君主制の現在』もおもしろそう。
この「立憲君主制」というのが、本書においてもキーポイントになっているのである。
立憲君主の極意は、政府の日々の政策に介入せず、公正中立の立場から判断ができることにある。たとえ心のなかで政府の政策に批判的な見解を抱いていたとしても、それを公に述べるのは許されない。
「第Ⅰ章 リリベットの世界大戦−−王位継承への道」(p.25)
「立憲君主制」というものは、わかりやすい制度ではないけれど、それゆえに味わい深いものであると思った。