ハキダメ記

読書録(主にキリスト教関連)

『信仰と「甘え」 増補版』土居健郎著 を買った

本書は、『「甘え」の構造』でおなじみの土居健郎氏が、「甘え」と「信仰」の関連性について語ったことをまとめた本である。 世間一般に「甘え」には否定的なイメージが強い。 しかしながら本書では、「甘え」は信仰にとって、重要な感情であることが説明さ…

「人間と永遠」G・K・チェスタトン著 はこんな本だった

このG・K・チェスタトンの「人間と永遠」は、H・G・ウェルズの『世界史概観』に対する反論として著された本である。 H・G・ウェルズは、「人間の完成」を未知の未来に見いだしていたが、キリスト教徒であるチェスタトンは、「人間の完成」をキリスト教…

『「カルト」はすぐ隣に −オウムに引き寄せられた若者たち』江川紹子著 を買った

オウムに引き寄せられた若者たちの様々なケースを、著者の江川紹子氏が細かく分析し丁寧にまとめ、「オウム事件の教訓」として「カルト」にねらわれやすい若者に向けて書かれた本です。 「カルト」は、「遠い世界」の存在ではなく、私たちの「すぐ隣に」いる…

「正統とは何か」G.K.チェスタトン著 はこんな本だった 【その2】

「狂人とは理性を失った人ではない。狂人とは理性以外のあらゆる物を失った人である。」チェスタトンの有名な逆説。 「内なる光」、人間の徳とか能力とかいったものを「崇拝の対象」にすることは、大変危険であるということ。 キリスト教は一刀両断する。「…

「正統とは何か」G.K.チェスタトン著 はこんな本だった

「正統」ほど危険に満ち、興奮に満ちたものはないということ。 イエス・キリストには「かくしごと」があったということ。 「物質主義」は、人類を宗教から解放したが、別の宿命論に結びつけたということ。 正統とは何か作者: ギルバート・キース・チェスタト…

「マキァヴェッリ−『君主論』をよむ」鹿子生浩輝著

マキァヴェッリの一般的なイメージは、悪徳を勧める「冷酷非情な人」というものであろう。 しかし、本書は、そういったイメージを覆す。 マキァヴェッリは、ユーモラスで女好きな人物であったという。 そして、『君主論』も、すべての君主に向けて書かれた論…

「愛するということ 新訳版」エーリッヒ・フロム著 オマケ

前回記事のオマケ。 本書において、フロムはさまざまな「愛のかたち」を分析している。 フロムによれば、「自己愛」は「利己主義」と同一視されがちだが、全く逆の性質のものだという。 そして、「利己的な人間」は、他人はもちろん、自分自身すら愛すること…

「愛するということ 新訳版」エーリッヒ・フロム著

「愛は技術である」とフロムは言う。 フロムの言う愛とは、テレビドラマで観るような「情熱的なもの」ではなく、「慈愛」のことを指しているようである。 そして、「愛する技術」の習得には、自己中心主義(ナルシシズム)からの脱却が必要であり、そのため…

「ライシテから読む現代フランス −−政治と宗教のいま」伊達聖伸著

今回のテーマは、フランスの政治制度「ライシテ」である。 ライシテから読む現代フランス――政治と宗教のいま (岩波新書)作者: 伊達聖伸出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2018/03/21メディア: 新書この商品を含むブログ (3件) を見る「ライシテから読む現代…

「ユダヤ教の人間観 旧約聖書を読む」エーリッヒ・フロム著 その3

今回は、フロムの「ユダヤ教の人間観」の読後感のオマケ。 気になった部分を抜き書きしてみるのだ♪♪ 「近親相姦的な束縛」という気になるワードも出てくるゾッッッ。ユダヤ教の人間観―旧約聖書を読む (河出・現代の名著)作者: エーリッヒフロム,Erich Fromm,…

「ユダヤ教の人間観 旧約聖書を読む」エーリッヒ・フロム著 その2

今回のテーマは「偶像崇拝」。「偶像」ってナニ??っていうお話なの♪ この本での「偶像崇拝」に対するフロムの見識は、とっっっても分かりやすくて、ついでに新鮮ピチピチな感じがするの♪♪ ユダヤ教の人間観―旧約聖書を読む (河出・現代の名著)作者: エーリ…

「ユダヤ教の人間観 旧約聖書を読む」エーリッヒ・フロム著 その1

この本は「宗教なんて、なんかウサン臭いし、堅苦しそうだし、なんかイヤだわ、近寄りたくないわっ。......でも、人生に意義をもって生きていきたいわっ、ステキな目標をもって生きていきたいわっっっ!」という人むけの本だろう。ユダヤ教の人間観―旧約聖書…

「【中東大混迷を解く】シーア派とスンニ派」池内恵著

「イスラム教」というものを少しでも理解したくて買った本である。 著者の池内恵氏を知ったのは、渡辺京二氏の本、『さらば、政治よ 旅の仲間へ』(晶文社刊)によってである。 その本では、池内氏の『イスラム国の衝撃』が紹介されていた。たしかに、イスラ…

「トマス・アクィナス 理性と神秘」山本芳久著

「神学」の新書である。トマス神学の「入門書」としての位置づけである。 だが、その内容は相当に「濃ゆい」。 著者の山本氏は《序》で次のように述べている。 偉大な思想家の思索の全貌を薄く広く要約的に紹介するだけの「入門書」は、結局、何に対しても読…

『「甘え」の構造 (増補普及版)』土居健郎著

「鬱は甘え」という言葉をよく耳にする。そして、このように言われるとき、「甘え」というものは、《良くないもの》、《必要ないもの》、そして《否定すべきもの》と捉えられているようである。 しかしながら、本書『「甘え」の構造』は、「甘え」をこのよう…

「リバタリアニズム アメリカを揺るがす自由至上主義」渡辺靖著

「帯」に引かれて買った本である。 帯にある、 ○移民 ○人工妊娠中絶 ○規制緩和 ○LGBTQ×ナショナリズム ×人種差別 ×イラク戦争 ×オバマ・ケア ×銃規制 ×死刑 というような、「保守」とも「リベラル」とも異なる、「リバタリアニズム」独自の価値観がブログ主…

「宣教のヨーロッパ」佐藤彰一著

今回、「ナナメ読み」するのは、佐藤彰一著の『宣教のヨーロッパ』(中公新書)である。 本書には「大航海時代のイエズス会と托鉢修道会」という副題が付けられており、ローマ・カトリック教会が、ヨーロッパにおける「宗教改革」を受けて、《新大陸アメリカ…

「イスラム教の論理」飯山陽著

今回は、飯山陽(あかり)著の『イスラム教の論理』をナナメ読みしていこうと思う。 前回取り上げた岩波新書の『ユダヤ人とユダヤ教』は、ユダヤというものを多様な視点から解説した本であったのに対し、本書は、現代のイスラム教、特に「イスラム国」に代表…

『ユダヤ人とユダヤ教』市川裕著

先日、岩波新書から出ていた『ユダヤ人とユダヤ教』という本を買った。この本は「ユダヤ」というものを「多様な観点」から考察した本である。ちなみに「チンコ」にまつわるエピソードまでも載っかっている。 そして、今回は久しぶりに「こんな本を買った」と…

『苦しみのキリスト教的意味 サルヴィフィチ・ドローリス』ヨハネ・パウロ二世著

今回は、「苦しみのキリスト教的意味」という副題を付けられた、ヨハネ・パウロ二世による教皇書簡、『サルヴィフィチ・ドローリス』の内容を解説していきたいと思います。『サルヴィフィチ・ドローリス --苦しみのキリスト教的意味--』ヨハネ・パウロ二…

「現代の批判」キルケゴール著

今回は、前回に引き続き、中公クラシックス版の『死にいたる病/現代の批判』を取り上げ、その『現代の批判』の部分、つまり257ページから345ページにわたる部分を読み進めていこうと思います。 ※今回も、本文および引用部分における“強調”部分は、ブログ主に…

「死にいたる病」キルケゴール著 その4

【『死にいたる病』キルケゴール著 桝田啓三郎訳 中公クラシックス】を私なりに解説してみました。 最終回の今回は、「第二編 絶望は罪である」と題された、141ページから244ページにわたる部分を読み進めていこうと思います。

「死にいたる病」キルケゴール著 その3

【『死にいたる病』キルケゴール著 桝田啓三郎訳 中公クラシックス】を《図説つき》で解説。 今回は、「この病〔絶望〕の諸形態」と題された、44ページから127ページにわたる部分です。

「死にいたる病」キルケゴール著 その2

【『死にいたる病』キルケゴール著 桝田啓三郎訳 中公クラシックス】を《図説つき》で解説。 今回は、「絶望の可能性と現実性(p.18〜p.23)」「絶望は「死にいたる病」である(p.24〜p.31)」「この病〔絶望〕の普遍性(p.32〜p.44)」のあたりを解説してい…

「死にいたる病」キルケゴール著 その1

【『死にいたる病』キルケゴール著 桝田啓三郎訳 中公クラシックス】を《図説つき》で解説。 今回は、難解な冒頭の部分「第一編 死にいたる病とは絶望のことである - A 絶望が死にいたる病であるということ(p.15-18)」を読み進めていきます。

「ハタチになったら死のうと思ってた」中村淳彦著

【『ハタチになったら死のうと思ってた AV女優19人の告白』 中村淳彦著 ミリオン出版】の読後記。 「死んだ、死にたい、死のうと思った−−この連載は、なぜか死の話が多い。取材だけの話ではなく、AV業界は本当によく人が消えたり、死んだりする。間違いなく…

「私のロシア文学」渡辺京二著

【『私のロシア文学』 渡辺京二著 文春学藝ライブラリー雑30】の読後記。この本は、渡辺京二氏が、ロシア文学を講義形式で紹介していく、という趣の本である。 何でも渡辺氏は、十人ばかりの女性を前にして、しかもお寺で、これらのロシア文学談義を行ったと…

「自由からの逃走」エーリッヒ・フロム著 後編

【『自由からの逃走』 エーリッヒ・フロム著 日高六郎訳 東京創元社刊】の解説。【後編】は、「逃避のメカニズム」としての「権威主義的性格」を中心に解説していきます。フロムが言うには、彼らは「サド・マゾヒズム的人間」であり、互いの依存心から「共生…

「自由からの逃走」エーリッヒ・フロム著 前編

【『自由からの逃走』 エーリッヒ・フロム著 日高六郎訳 東京創元社刊】の解説。【前編】は、近代人が勝ち取った「自由」とはどういうものであったのかを解説していきます。フロムが言うには、この「自由」によって近代人は「不安」に取りつかれるようになっ…

「悪と全体主義」仲正昌樹著

【『悪と全体主義 ハンナ・アーレントから考える』仲正昌樹著 NHK出版新書549】の読後記。…今回取り上げたこの『悪と全体主義』という新書は、アーレントの著作、特に『全体主義の起源』と『エルサレムのアイヒマン』の二作品に焦点を当てたものである。…